AIが実行可能な仕事とは?データサイエンティストが語るAIの最先端。 | AI・機械学習 | DataVehicle

コラム

AIが実行可能な仕事とは?データサイエンティストが語るAIの最先端。

1956年にAI(人工知能)が登場して以降、その技術はめざましい発展を遂げてきました。技術水準が向上したAIはいま、インターネットの検索エンジンやスマートフォンなどの音声アシスタントシステムといった私たちの身近なサービスや製品に組み込まれています。日常生活の中で当たり前にAIに触れられるようになった昨今ですが、ビジネスの現場におけるAIの最先端はどうなっているのでしょうか。データビークル取締役副社長 CPOでデータサイエンティストの西内啓が解説します。

データサイエンティストが語るAIの最先端

ディープラーニングが起こした画像処理技術のブレイクスルー

1950年代後半〜1960年代にかけての第一次人工知能ブームと1980年代の第二次人工知能ブームを経て、現在は2000年代から続く第三次人工知能ブームに至っています。

過去2回のブームがいずれも下火になってしまった要因として、人々の人工知能への期待値が当時のAIの技術水準を上回っていたことが挙げられます。

こうした過去2回のブームを経て、第三次人工知能ブームでは、「ビックデータ」の登場で飛躍的にAIが進化しました。膨大な量のデータをもとにAI自身が知識を獲得する「機械学習」が実用化されたのです。

また、画像やテキスト、音声といったデータに含まれる特徴をより深く学習する「ディープラーニング」も、第三次人工知能ブームを盛り上げる要因となっています。

ディープラーニングの技術は、AIによる画像処理技術に大きなブレイクスルーを起こしました。

画像処理技術とは、画像から特徴をつかみ、それと同じ特徴を持つものを識別する技術です。コンピューターに膨大な量の画像データを読み込ませることで対象物の特徴を学習させ、それと同じ特徴を持った画像を検出する仕組みです。

たとえば、工場のラインで不良品を検知する作業では、人間が画像を見て正常な製品かそうでないかを判断をしています。しかし、具体的にどのような状態であれば不良品なのか、診断ルールを作るのは大変です。

AIが人に代わってこの作業をする場合、同じ環境下で発生した不良品の画像を大量に読み込ませ、不良品のパターンを学習させます。そのパターンに合致する製造品がライン上に流れてきたら、不良品のアラートを出すといった仕組みが実際にできあがっています。

工場などで実用化が始まっている画像処理機能ですが、一方で課題を含んでいます。同じ画像でも、撮影者や環境、撮影に使用する機器が異なると、別の画像と認識してしまう点です。

たとえば、X線画像などから特定の病気を診断する仕組みを作ろうとした場合、研究段階では正確に画像診断ができても、別の環境で同じアルゴリズムを適用したら診断の精度が下がってしまうことがあります。

こうした外的要因に左右されることなく、正確な診断を可能にするにはどうすればよいか、画像処理技術の次の課題となっています。

第三次人工知能ブーム下での自然言語処理技術の進化

第三次人工知能ブームでは、画像処理技術のほかに自然言語処理にも大きな進化がありました。

自然言語処理とは、自然言語で書かれたテキストデータを実用的に扱うための技術です。

中でも、AIを使った翻訳は、近年非常に精度が高くなってきています。また、チャットボットのように人間が入力した質問に対してAIが受け答えしたり、長文を要約したりといった技術も進んでいます。

自然言語は曖昧です。そのため、クリエイティブな小説を作ったり、自分の思いを相手に届けるような心のこもった文章を作ったりといったことはまだAIでは実現していません。しかし、定型的な言語のやり取りをするような業務では、AIで対応できる領域が増えつつあります。

ビジネスの現場でAIがどう使われているか

先に述べたような画像処理技術を用いた工場での不良品検知システムのほかにも、ビジネスのさまざまなシーンでAIが活用されています。

たとえば、宅配便事業者の中には、LINEを使った再配達受付や配達時間の変更に対応していますが、応答をしているのはAIチャットボットです。LINEを開いて質問や要望を入力すると、AIが定型の回答を返信します。

また、クレジットカードの不正利用を防ぐ仕組みにもAIが活用されています。過去の不正パターンを機械学習によって理解し、決済が行われるタイミングで不正利用を検出します。

採用業務におけるAI活用

企業の採用業務においても、AIの活用が進んでいます。ある企業では、応募者から提出されたエントリーシートから、自社にマッチしそうか、そうでないかをAIが判断しています。

具体的には、これまでに採用した人たちの実績や採用プロセスといったデータをコンピューターに機械学習してもらい、判断基準を定義します。そのうえでエントリーシートを読み込むことで、シート上に書かれている単語や頻度、トピックなどから、採用すべき人材をAIが見極めます。

AIが一次的にエントリーシートを精査し条件にあった人を抽出することで、採用担当者は最終判断に集中することができ、精度の高い採用活動が可能となります。

一次面接の際、応募者に動画の提出を求めているソフトバンクグループでは、画像処理技術を利用して合否判定を行っています。

AIによって不合格と判定された応募者はあらためて人の目で動画を確認し、合否判定を行いますが、現状ではAIは人の判定と同程度の精度を実現していると言います。

ソフトバンクグループでは合否判定にAIを活用することで、合格の精度が92〜93%まで向上しました。不合格となった人の中には「実は合格だった」という人が少なからず存在するものの、合格の母集団には「実は不合格だった」人はほとんどいないそうです。

AIを活用して業務効率化と生産性向上を図る

これまで見てきたように、AIはここ数年で実用化が進み、さまざまなシーンで活用されるようになりました。採用業務におけるAI活用の事例にあるように、業務の一部をAIに置き換えることで、人は本来「人」がやるべき業務に集中することができます。自社の業務プロセスを振り返り、AIに任せられそうな業務を切り出すことで、業務効率化と生産性向上を目指してはいかがでしょうか。

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