汎用人工知能とは?具体例と活用事例を元に解説【汎用AI】 | AI・機械学習 | DataVehicle

コラム

汎用人工知能とは?具体例と活用事例を元に解説【汎用AI】

人工知能(AI)という言葉が世の中に広く認知されたのは1956年。米国東部のダートマス会議で開催されたワークショップにて、人工知能研究の第一人者であるジョン・マッカーシー氏によって提唱されました。この会議では、人間のように考える機械を人工知能と呼んでいます。こうした人工知能を、汎用人工知能といいます。汎用人工知能とは具体的にどんなものなのか、汎用人工知能が実現することで何が起こるのか、解説します。

汎用人工知能とは?

汎用人工知能とは、人間と同じ感性と思考回路を持つAIです。

人間は仕事や日常生活で予想外のできごとが起こった場合、それまでの経験をもとに判断し、問題解決を試みます。汎用人工知能も、人間のようにみずから考え問題を処理する能力を持つと言われています。

人工知能の概念が登場した当時、汎用人工知能の実現は非常に困難だと考えられていました。しかし、2010年代にディープラーニングの技術が登場したことで、再び研究活動が活発になっています。

汎用人工知能が実現したら何が起こるのか

もしも汎用人工知能が実現したら、どんなことが起こるのでしょうか。

たとえば、自然言語処理に長けた汎用人工知能がチャットボットやメール問合せの対応をするとしましょう。汎用人工知能は人間からの非定型な問いかけに対して文脈を理解し、適切な回答を作成して返信します。チャットやメールの向こうで人間が対応しているのと遜色ないようなスムーズなやり取りが実現するでしょう。

さらに、動画や音声処理が加わった場合、オンライン会議で画面の向こうにいるのが人間なのかそうでないのか、見分けがつかなくなるでしょう。

こうした汎用人工知能の技術はまだまだ構想段階にあり、実現は先となりそうです。

汎用人工知能(強いAI)と特化型人工知能(弱いAI)の違い

アメリカの哲学者ジョン・サール氏は、人工知能を汎用人工知能(強いAI)と特化型人工知能(弱いAI)とに分けて定義しています。

特定のタスク処理に特化した特化型人工知能(弱いAI)

2021年現在、世の中で「人工知能」と言われているのは、特定のタスク処理に特化した「特化型人工知能」です。

特化型人工知能は、特定のタスクに関しては人間と同じかそれ以上の能力を有しますが、感性や思考など人間と同じように振る舞うことはできません。

近年、ビジネスシーンにおいてもチャットボットによる問い合わせ対応や画像処理技術を用いた工場での不良品検知システムなど、活用の幅を広げています。

感情を理解し行動に結びつける汎用人工知能(強いAI)

人工知能の研究者たちが目指すのは、特定のタスク処理に特化した人工知能ではなく、人間と同じように振る舞うことのできる汎用人工知能です。

人間のように、「楽しい」「悲しい」といった感情を理解し、楽しいと感じたら笑う、悲しいと感じたら泣くといったように感情をアクションに結びつけられる。人間がタスクを指示して人工知能が処理するのではなく、業務全体からタスクを明確にして処理するところまでを人工知能みずからが考えて行う。

残念ながら、現時点ではそうした汎用人工知能は実現されていませんが、SF映画などにみられるロボットやアンドロイドのように人間と限りなく近い人工知能がいつかは実用化される日がくるかもしれません。

AIは仕事を奪う?

人工知能の技術向上に伴い、「AIが仕事を奪う」といったことが話題にのぼるようになりました。

2014年、英国オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授らが『雇用の未来−コンピュータ化によって仕事は失われるか−』という論文を発表しました。その中で、今後20年のあいだに、人間の仕事の約50%が人工知能や機械によって代替されると予測しています。

実際にいま、AIや機械が人間に代わってさまざまなタスクを処理しています。たとえば、人工知能の画像処理技術を用いた安全管理や製品の検品作業、自然言語処理技術を用いた翻訳、議事録作成といった作業など。

これらは、「仕事を奪う」というよりは、人間の負担を減らして本来人がやるべき業務に集中する、生産性向上や効率化の文脈で用いられています。

現在の特化型人工知能の技術では、次のような仕事はAIに置き換えられる可能性は低いと言われています。

・クリエイティブ職(小説や映画制作、商品企画・開発、研究開発など)
・マネジメント職(企業経営、店舗管理、工事現場の管理など)
・ホスピタリティ職(看護、介護、ホテル接客など)

汎用人工知能が実現すれば頭脳労働もAIの仕事に

汎用人工知能は、人間のように考え、行動することができます。汎用人工知能が実現すれば、タスク処理だけでなく知的労働も可能となるでしょう。

たとえば、汎用人工知能に税務についての学習をさせれば、従来の税理士に代わって税務相談に乗ってくれるようになるかもしれません。領収書を電子化して汎用人工知能に送れば、税務処理をしてくれるでしょう。弁護士や医師も、法律や医学の学習をさせることで人工知能に代替させられる可能性があります。

これまで人間が勉強して知識を身につけて取り組んできた仕事を、人工知能が代替する。人工知能研究者のあいだでは、こういった未来が描かれています。ただ、それが実現できるかどうかは、まだ模索をしている最中です。

科学技術の発展が必ずしも人の仕事を奪うとはいえない

テクノロジーが人の仕事を奪うということは、これまでもたびたび言われてきました。

近年でいえば、ITの普及によって消滅した仕事も1つや2つではないでしょう。一方で、新しい技術が新しい仕事を生み出していることも事実です。

人工知能も同様に、仕事を奪うだけでなく、新しい仕事を創り出す可能性があります。

専門家のあいだでも見解がわかれる汎用人工知能の実現可能性

人間に限りなく近い汎用人工知能。本当に実現するのか、実現するとしたらいつ頃なのか、研究者たちのあいだでは見解がわかれています。

米国の未来学者レイ・カーツワイル氏は、自著「The singularity is near」の中で、汎用人工知能が2029年に誕生すると予測しています。

また、ロボット研究の第一人者であるロドニー・ブルックス氏は、未来学者マーティン・フォードにインタビューに「2200年までに50%の確率で汎用人工知能が実現されるだろう」と答えています。

実現可能性も含め、専門家のあいだで見解がわかれる汎用人工知能の未来。今後、AIがどのように発展していくのか、目が離せません。

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