需要予測の方法について、具体例を元に分かりやすく解説 | ビジネス | DataVehicle

コラム

需要予測の方法について、具体例を元に分かりやすく解説

企業活動にまつわるさまざまな計画を立てるうえで、需要予測は非常に重要です。精度高く需要予測を行うことで多くのメリットが得られますが、正確に予測を立てることは簡単ではありません。この記事では、需要予測のメリットや需要予測の方法、予測を行う際の注意点について解説していきます。

需要予測とは

需要予測とは、自社製品やサービスの将来的な需要を予測することをいいます。仕入れや生産、販売や資金繰りなどの計画を立てるうえで非常に重要な取り組みです。

飲食店の来店客数を予測してスタッフのシフトを考えたり、電話注文数を予測してコールセンタースタッフを配置するなど、製品やサービスの需要予測に基づいて必要なスタッフ数を予測することも需要予測のひとつです。

需要予測の目的

需要予測の目的は「もったいない」を回避することです。需要が正確に予測できないと、製品を作りすぎて廃棄せざるをえなくなったり、生産が足りずに利益創出の機会損失につながったりします。需要予測を精緻に行うことで、こうした損失の回避を目指します。

需要予測のメリット

いわゆる定番商品については、需要予測の重要度はそれほど高くありまえん。例えば大手メーカーの定番品となっている食パンは、需要予測を立てるまでもなく、毎日何百万といった生産計画に基づいて安定的に生産・消費されているはずです。

需要予測が必要なのはそういった定番品ではなく、季節や天気などの諸条件によって需要に変動が見られる製品・サービスです。それらの需要を精度高く当てていくことにより、以下のメリットが得られます。

商機を逸したことによる「廃棄」を避けられる

例えばファッションアイテムの場合、売上は市場トレンドに大きく左右されます。今年の流行は来年には古いものとなり、作りすぎて余った製品は廃棄せざるをえなくなります。

また機械部品の場合、その部品が使われている機械が市場からなくなれば部品自体も不要なものとなり、廃棄するしかありません。

このように、作りすぎて余らせることで廃棄に直結してしまう製品は、精度の高い需要予測によって廃棄を回避するメリットが大きいといえます。

在庫過多のリスクを避けられる

次にアイスクリームを例に見ていきましょう。

アイスクリームは賞味期限が長く、作りすぎても一定期間は保管しておくことができます。しかし、「多く作っておいて、売れなかった分はとっておこう」という考え方も、実は「もったいない」のです。

アイスクリームの需要を精度高く予測できていれば、生産や保管にかかったコスト分は現金として手元に残っていたはずです。現金は流動性が高くさまざまな使い道が考えられますが、アイスクリームという形になったことで、保管しておくか捨てるかしかない、融通の利かないものになってしまいます。

このように、在庫を抱えすぎることも企業にとってはリスクとなります。こうしたリスクを避けられることも需要予測のメリットなのです。

機会損失を避けられる

作りすぎによる廃棄や在庫の抱えすぎは避けたいところですが、その一方で「足りない」ことも企業にとっては痛手となります。販売の機会を失うことはもちろん、欠品が続くことにより消費者や取引先からの信頼を失うことにもつながりかねません。

需要予測を正確に行うことで、こうした機会損失を避けることができます。

需要予測の方法

需要予測はどのような方法で進めればよいのでしょうか。

ここでは、製品を「発売前」「発売後」に分け、それぞれの需要予測の方法について解説します。

発売前製品の需要予測

新製品は参考にできる売上実績がまだないため、既存の製品に比べて需要予測は難しくなります。この場合、市場調査をもとに需要予測を立てることになります。市場調査では主に以下のことが行われます。

●アンケート調査
消費者に「〇〇のような商品があれば買いたいか」といった項目の意識調査を実施します。「買いたい」と回答した人と実際に買う人の数は必ずしもイコールになるとは限らないため、過去の市場調査と実際の売上の関係性等を参考に、慎重に売上を予測します。

●テストマーケティング
製品リリース前に製品体験会や試験販売を行います。実際に体験してもらった上で「〇%の人が欲しいと答えた」「〇%の人が知り合いに薦めたいと回答した」などのデータを収集し、生産・販売計画に活かします。

●取引先からのオーダーを参考にする
取引先の小売業から初回にどれくらいのオーダーが来るかも需要予測に役立てられます。

発売後の製品の需要予測

発売前製品に対して、発売後の製品の需要予測はどのように立てたらよいのでしょうか。

●前年同時期の売上から予測する
前年同時期の製品売上を参考に需要を予測します。

気候や社会状況といった諸々の環境が前年と大差なく安定している場合に有効な方法です。

●前年の年間売上から予測する
「前年の同時期」よりも幅を広げて、「前年1年間の全体売上」から予測する手法です。

前年の1年間の全体売上に対して、今年1年間の全体売上が5%伸びているとします。そこで、前年同時期の生産数より5%増しという需要予測を立て、生産計画に活かします。

●外的環境を考慮する
これまでの売上実績に加えて、説明変数を増やして予測を立てる方法です。説明変数とは因果関係の原因となる変数のことで、「気象条件」「周辺環境」「競合の動向」「ユーザーの価値観」などさまざまです。

説明変数を増やしていくことでより高度な需要予測が可能になりますが、非常に複雑でExcelで集計できる範疇を超えることがあるため、データサイエンスを駆使して取り組む必要があります。

需要予測の注意点

需要予測は外れるリスクがあることを理解しておきましょう。

予測は「このままいくとこれくらいの需要が見込めるだろう」という仮説に基づいて立てられるため、「このままいく」の部分が外れると当然結果も変わってきます。

結果に大きく影響する出来事の例としては以下が挙げられます。

  • 天変地異
  • 間の価値観を揺るがすような出来事
  • メディアやSNSをきっかけに突然話題になる
  • 競合の大ヒットにより自社の顧客が流出する

こうした出来事をすべて当てることは不可能ですが、工夫次第でリスクを減らしたり次に活かしたりすることはできます。

リードタイムを短くする

リードタイムとは、生産からユーザーの手元に届くまでの期間をいいます。需要予測を外さないためには、このリードタイムをできるだけ短くすることが有効です。

例えば、リードタイムが半年の製品の場合、ユーザーに製品が届くまでに競合企業の製品がヒットしたり、消費者の関心が自社製品から離れるような出来事があっても不思議ではありません。これがリードタイム1週間であれば、そういった出来事が起こる可能性も下がります。

リードタイム短縮のため、各工程の効率化など自社でできる施策を探しましょう。

「予測外し」について議論できる体制づくり

前述の通り、需要予測が外れること自体は仕方のないことです。大切なのは、外したことに関して企業内で議論できるような体制づくりです。

需要予測の中身がブラックボックス状態になっていると、外した原因も不明のままで対策が講じられません。何を基に予測が立てられているかを組織で共有し、「予測が外れた原因は何か」「このままだとより大きく外すリスクがある」といった議論をすることで、今後の対策を講じることができます。

精度高い需要予測で経営状態の改善を目指そう

過去データや市場調査をもとにした従来の需要予測手法では当て切れなかったものも、近年のデータサイエンスの普及により精度高く予測できるようになってきました。予測の失敗による製品廃棄や在庫過多、機会損失などのリスクを回避して経営状態を健全に保つためにも、新たな手法も取り入れつつ需要予測の精度を上げていくことが求められています。

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