データサイエンス入門講座 第8回 アウトカムを設定するコツ(2) | データサイエンス | DataVehicle

コラム

データサイエンス入門講座 第8回 アウトカムを設定するコツ(2)

そのアウトカムでズルはできるか

前回示したように、まずは利益に直結するか、ということを考えて通貨の単位で記録されているデータ、日常的に大きなコストがかかっているデータに着目すればアウトカムの目星がつけられます。

ただ「長期的に確実に」ついては難しいところです。それがわかれば苦労しないよと思われる方もいるかもしれませんので、この部分については「ズルができるか」という別の角度からチェックしてみましょう。

システム開発やコンサルティングを請け負う会社の営業活動についてのアウトカムを考えてみましょう。一般的に、こうした会社の営業スタッフは、担当した案件でいくらの売上をあげるか、ということで評価されることが多いですが、これは長期的な利益に繋がる適切なアウトカムでしょうか?

そうとは言い切れないことが、この「ズルができるか」というところからの視点でわかります。なぜなら、営業スタッフが売上だけで評価されるなら、「不当なダンピングを行って売上をあげる」というズルが成立してしまうからです。

たとえば、エンジニアの人件費、必要なハードウェアやソフトウェアなどの調達込みではどう考えても2千万円のコストがかかる、という案件があったとしましょう。誠実な営業スタッフは、諸々のリスクや会社の利益を考え、最低でも3千万円の金額で提案を行ないます。

一方でズルい営業スタッフは、これを1千万円で提案してしまうかもしれません。提案された側から見れば、安い分魅力的に見えるでしょう。こうしてズルい営業スタッフは1千万円の売上をあげたことになりますが、必要なリソースの半分しかもらえないのだから、会社としては赤字プロジェクトになってしまいます。

これでは長期的な利益に繋がるはずもありません。プロジェクト完了ごとにきちっと会計をしめて、どれだけの黒字を生み出せたのかをアウトカムとした方がよりズルしにくいものになるでしょう。

こうしたズルは売上側だけではなく、製造や物流側におけるオペレーションによっても起こりえます。「公平な第三者によって評価される品質」や「 正直に報告されるトラブルの件数」を アウトカムとして管理できれば生産性は向上するかもしれません。

しかし、自前で報告することが前提とされて「品質」をあげようとすれば、データを改竄して過大によく報告したり、手心を加えてもらえる人に頼んだりすることで簡単に達成できます。トラブルの報告件数を小さくするなら、バレない範囲のものをすべて隠したり、上がった報告を誰かが握りつぶすだけでも簡単に達成できます。

このようにどのようなズルが考えられて、それに対し、どうにすればもっとズルしにくくなるか、と考えることが、アウトカムのブラッシュアップに繋がります。

同じ値ならうれしさは同じか

また別の表現をすると、よいアウトカムとは「どれだけ極端に状況が違っても、得られた値が同じならうれしさも同じ」というものになります。

コストの余裕を持った見積もりで1千万 円を売上げるのと、不当なダンピングで同じ1千万円を売上げるのとでは、うれしさが異なります。この「見積もりの妥当さ」を加味して、売上を評価するためには、最終的にはプロジェクト終了ごとに振り返って、その利益をみればいい、といえます。

また、トータル5千万円のコストがかかるプロジェクトで6千万円の売上をあげても、 9千万円かかるプロジェクトで1億円の売上をあげても、1千万円の黒字ならうれしさは同じだろうか?と考えてみてもよいわけです。

あるいは、内部エンジニアの数が限られていて、売上の規模が大きくなればよりおおきな粗利が必要というような状況であれば、エンジニア1人月あたりの粗利額、といったアウトカムを設定した方がよいかもしれません。

人数、期間、値引き、取引の特性など、「状況の違い」としてさまざまな条件が考えられますので可能な限りたくさん、極端な状況を想定してみて、「その場合でもやはりうれしさは同じだろうか?」と考えてみると、アウトカムの思わぬ問題に気づくことがあります。

また、この「うれしさ」という点は、アウトカムの大事なポイントで、私たちが相談される際にも「このデータの中の何がどうなればうれしいですか?」と聞き返しています。

お客さんがもっとたくさん買ってくれたらうれしい、従業員がもっとたくさん売ってくれたらうれしい、設備がすぐに壊れなければうれしい、などその答えには、さまざまな可能性があると思いますが、そうした「うれしさ」をデータに基づいて、具体的に定義できるかが、アウトカムを考えるという行為です。

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