意思決定に繋がるアンケート設計と高度な分析で、データドリブンな観光マーケティング施策立案を支援
公益財団法人大阪観光局
企画・マーケティング戦略部 マーケティング担当 兼 観光DX担当 ヒルズ・ジェームズさん
新型コロナにより状況が一変した観光業界だが、感染対策の緩和で回復の兆しが見えてきた。そんな中、大阪の観光振興に取り組む公益財団法人大阪観光局では、来阪者の誘致を図るため、データビークルが提供する「オルタナインサイト」サービスを活用して観光客のインサイトを探るプロジェクトを開始。府内の各市町村に対し、データを活用した観光マーケティングのコンサルティングを提供している。同局のヒルズ・ジェームズさんにお話を伺った。
データドリブン経営の目線をそろえたかった
ー大阪観光局では、コロナ禍でどういった取り組みを行ってきましたか?
ヒルズ:2019 年までは、インバウンドへの対応業務が中心でしたが、コロナ禍によって、国内観光客の誘致へと取り組みが大きく変化しました。大阪観光局は「GoTo Eat キャンペーン」や「大阪いらっしゃいキャンペーン」といった消費喚起事業の事務局として、消費者の消費活動を促進するためのキャンペーンや、コロナ禍での観光客の満足度向上のための取り組みを行ってきました。
国内観光客を誘致するにあたっては、感染に対する不安から混雑している場所に行きたくないという消費者の意識を考慮する必要がありました。また、大阪市以外のスポットにも注目が集まっていたため、よりこれまで以上に大阪府全体の観光を促進する必要が出てきました。そこで大阪府内43 の市町村において、誰が、どんな場所へ、どのような目的で訪れるのかを調査することとなったのです。
大阪観光局は2017 年頃からデータマネジメントプラットフォーム(DMP)を構築し、関西国際空港などで実施した動向調査やモバイル空間データなどを蓄積してきましたが、これらのデータはインバウンドのものが多く、国内市場のデータはあらためて集める必要がありました。そこで「大阪いらっしゃいキャンペーン」のデータを活用して効果検証することをデータビークルさんに相談したのです。
質問設計からレポート化まで施策の効果検証に伴走
ー今回のプロジェクトでは、どのような取り組みをしたのでしょう。
ヒルズ:「大阪いらっしゃいキャンペーン」では、キャンペーンを利用して大阪府内に宿泊した方に対し、地域内のさまざまな店舗で使用できる地域クーポン「regionPAY」をアプリで発行しました。このアプリのデータを使用することで、どの年齢・性別の方がどのような支払いをしたか、決済状況を把握することができます。
さらに、旅行の具体的な目的を知るため、あらためてアンケート調査をする必要がありました。そこで、データビークルさんと共に、「誰が(Who)」「どんな目的でどこに行くか(What)」「ターゲットに訴求するにはどんな方法があるか(How)」の3 つをポイントに、アンケートを設計しました。アンケートの対象者は、2022 年6月に行われた「大阪いらっしゃいキャンペーン」を利用した関西2 府4県の方々です。対象者には、regionPAYアプリを介してアンケートを送付しました。43 の市町村をエリアに分けてグループを作成し、データの分析を行いました。データ分析結果はデータビークルさんにてレポートにまとめていただき、結果の共有を希望する市町村に持参して説明しました。
このレポートでは、各市町村の観光客の特徴をそれぞれ理解しやすいレベルにして整理して頂きました。さらに「大阪いらっしゃいキャンペーン」が関西から全国に拡大されたため、2022年秋から冬にかけて、第2 回のアンケート調査を行いました。
近隣府県ではなく遠方から大阪を訪れる場合、あまり知られてない場所よりも、大阪市内を中心に巡る傾向が強いため、2回目のアンケートは2 倍のサンプル数を目標としました。
2回目のアンケートではもう1つ、コンセプト調査も行いました。大阪府内を6つのエリアに分け、それぞれのエリアに説明文をつけます。それを見て、どこに行きたいと感じたか、回答をしていただきます。このアンケートにより、各エリアのコンセプトに興味を持った人はどんな特徴を持っているか、傾向を把握できるようになりました。
ーデータ分析結果を提供した市町村からはどんな反応がありましたか?
ヒルズ:各市町村にはデータ活用の必要性を今まで以上に理解していただけたと思っています。
今回のデータ分析を通して、「市町村A には60 歳以上の方たちが多く訪れている」「市町村B にはこんな目的で訪れる傾向がある」といった強みが明らかになり、各エリアのコンセプトに興味を持った人はどんな特徴を持っているか、傾向が分かるようになりました。これにより、各市町村ではこれらの情報を活かしたマーケティング施策を実施できるようになり、このデータ分析結果を受けて、市町村のマーケティング施策の展開について関心が高まりました。2023年度はそのうちの複数の市町村と連携して観光マーケティングに取り組んでいます。
多くの学びを得られたワークショップ
ー今回のプロジェクトの成果をもとに、今後どんな取り組みをされる予定ですか?
ヒルズ:大阪観光局が運営する「OSAKA INFO」というサイトを充実させたいと考えています。どんな人が、どのようなコンテンツを好む傾向にあるか。データを参考にして、どのような方法で訴求すると効果につながるか、How の部分を検討していきたいですね。広告媒体は何を使えばいいか、どんなクリエイティブにすればターゲットに響くかを考えて、サイトを作っていきたいと思います。今回のプロジェクトで連携が決まった市町村についても、同じようにプロモーションを実施していく予定です。
ー今回の取り組みの中で、データビークルのサービスが特に魅力的だと思われた点を教えてください。
ヒルズ:アンケート設計のプロセスです。マーケティング施策の意思決定に役立つデータを得るために、アンケートを設計しました。そのプロセスをワークショップという形で一緒にできたことで、技術やスキルを身につけることができました。毎週のワークショップが一番の楽しみでしたね。データビークルさんの考え方はデザインシンキングに近く、独自性があります。このプロジェクトで得られた知識はほかの事業でも活かせるのではないかと感じています。
コンセプト調査におけるレポートも期待以上で、具体的なマーケティング施策の案まで出していただけました。
それと、データリテラシーは人によってさまざまですが、データビークルさんには分かりやすく説明してもらえて助かりました。特にコンセプト調査の際は、自分が英語で考えているコンセプトを日本語でどう説明すればいいか分からない場面がよくありました。そうした場合も相談に乗っていただき、物事を分かりやすく説明するためのノウハウを得ることができました。
また、今回、データビークルさんの分析ツール(dataDiver)を活用したことで、いつもよりかなり手間を減らすことができたと感じています。
データビークルさんとの連携は非常に楽しく、ワークショップを通して多くの学びを得ることができました。大阪にとどまらず、全国の観光団体を力強く支援するものとして、今後もさらに発展するサービスであると信じています。期待しています!
※ この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数で記述しています。
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